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刀鍛冶のように

2015年 06月 09日
刀鍛冶のように_e0279055_00230337.jpg
コピーライターを長年やっていますが、「文章を書く」というのは面白いもので、かなり日々の気分に左右されてしまいます。

できるだけ安定して原稿が書けるようになりたいのですが、意外に難しいものです。

それでも仕事ですから、気分が乗らなくても書かねばなりません。

気分が乗っていて、調子が良い時には、一発でほぼ狙い通りの原稿がかける場合もありますが、不調でも書かねばならない場合などは、言葉を選びながら何度も手直ししなければならないという事も、けっこうあるのです。




原稿は書き終えた後は、必ず読みなおしをするのですが、「不調でも書いた」という時などは、かなり手直しをせざるを得ません。

手直しが必要な場合というのは、たいていは情報不足で、元資料にあたるとか、改めて担当者に確認という名の取材をし直すとか、ネットを回って基礎的な知識を再入手するなどの手間がかかったりします。

そうやって新しい情報を仕入れて書きなおす時は、まず9割は、前回書いた原稿は使えない事がほとんどです。一から書き直しをした方が、言葉選びも正確で精密になっていますし、無駄な情報を的確に省けるようになっているので、前回の原稿は捨ててしまった方がたいていはうまく行きます。

情報を集めても、まだまとまらない、という場合があるのですが、これは「醸成不足」なんですね。情報の納得度というか、書くべきテーマの核心を、心の奥底まで染み込ませられていないという事なんです。

この場合は、とにかく一度か二度くらい「寝る」必要が出てきます。

この「寝る」は「練る」の間違いではなく、本当に物理的に「寝る」のです。
ふとんを敷いて、ぐっすり一晩寝る。

この工程を経るか経ないかで、文章の品質はずいぶんと違ってきます。

おそらくは、テーマやことば遣い、ターゲットにとって必要な骨格などなどが、寝ている間にかなり整理されるのだろうと考えられます。一晩寝るだけでもずいぶんと「こなれ方」が変わってくるのです。

ただ、原稿を書くという仕事には「締切」というものもありますから、この「寝る」という、一番良い手法が使えない場合もありまして、なかなかこなれた原稿が書けないのだけれど、どうしても今日中に仕上げないといけない場合などは、ひたすら手直しをする作業に没頭することになります。

長年ライターをやってきておりますので、自分の気持ちの「ノリ」とは別に、単語一言一言を見直しながら、無駄を少しずつ省き、より適切な表現に置き換えるなどして、最低限のレベルはクリアした文章に「持ち上げる」という事は、通常業務として普通にやれます。

というか、こういう手間ばっかりかかって面白味のない作業もできなければプロとも言えないのでしょう。世の中的には。

で、この言葉を研いでいく過程は、まさに昔の刀鍛冶が、日本刀を鍛え上げるために、鋼を金槌で叩いては炎の中に差し入れ、そしてまた叩くような繰り返しの作業になります。同じ文章をひどい時は20回くらい読み直すというような事もあるのです。
(しかし、一発でほぼ完ぺきな原稿が書けるときもあるんですよ。このあたりのバラつき、開きはかなり大きいのです。)

催眠療法の父、ミルトン エリクソンは、患者を催眠に入れるためのスクリプト(患者に対して語り掛ける「お話」の内容:シナリオ)を、40回も書き直しをしたといいますが、さもありなんと思うのです。

広告のコピーも、実は催眠のスクリプトと同じで、その文章を読んだ人の無意識にまで、ストレートに届くように言葉を選んで効果を狙わねばならないのです。

さらっと読んだだけだと、表面的な製品特長をうたっているだけにしか読めないけれど、よくよく読むと製品情報だけでなく、企業の企業文化の部分まで、ひとつのコピー(広告文)に織り込んでおく、というのはごく普通に行っていたりします。

こうすることで、広告効果を重層的にすることができるのですね。
長い目で見た時にお客さまの印象が変わってきます。

あと、日本語の場合は音のリズム。これもかなり重要。同じ音の響きが続かないとか、五七五の俳句のリズムに多少近づける(そのままだと、ちと強すぎる)とか、ひらかなばかりだと読みにくいから、ある程度は漢字を入れるとか、逆に漢字が多すぎるからひらかなで開くとか。

あるいは、グラフィックデザイナーさんからの要望で、特定のスペースに文章を詰め込むために、句読点をつけたり外したり、言い回しを変えたり、言葉選びを調整して3文字増やすとか、一行分22文字を文意を変えずに削るとか。

そういう、とんでもなく七面倒くさいことを、わけわからんとか、無駄でしょう、とかのわかったような事を言う奴の価値観など一切無視して、ひたすら「最終的な読者が読みやすい」「最終的な読者が、おお!と思う」「最終的な読者の無意識にスッと入る」「見た目でパッと伝えたい事が一発で深層心理にまで届く」ような地点を目指して、ひたすら磨きこんでいくのが、ライターの仕事なわけです。

で、何が言いたいかというと、そこまでやらないと、本当の事を言って、「見込み客を購入客に転換するための下準備」は整わないんだよ、という事なんですね。

無意識なんです。
無意識。

人の行動と心理を決定付けているのは、表面的な「意識」ではなくて、いまひとつよく分からない、あいまいな心理、「無意識」という奴なんですね。

で、そこの心理的な壁をスルリと通り抜けて、製品の良さを無意識下で「ええなぁ、これ」と感じさせる、というのが、我々グラフィックデザインであるとか紙のパンフレットを作っている制作者の、ごく普通の価値観だったりするんです。

日本では、かなり数多くのパンフレットが作られてきていますし、いまでも、ありとあらゆる場所でパンフレットが制作され活用されていると思いますが、ようするに「制作者側が、どれだけ真剣に作ったか」という事は、けっこうというか、かなりというか、ほとんどの場合でお客さまの側に伝わってますね。
ほぼ間違いなく。

だって、みんな紙のパンフレットなんて見慣れてるんだもの。ものすごく目が肥えている。
他の国の事は知りませんが、こと日本人に関しては、中途半端な目の肥え方ではないですよね。
観察、選択側の「プロ」ばかりです。

日本人は「パンフ受取人」として、みなさんほとんどみんなプロレベルですわ。

ちょっと紙の厚さが薄いとか、厚いとか、それだけでも「いまいち」と、無意識レベルで判定されてます。
それは間違いありません。

ですから、印刷物こそ、キチンとプロに頼むべきです。
たとえ、制作過程で良く分からない事をしてたとしても、「そういうものだ」と思って見ておかないと、なかなか高品質なパンフレット制作の実際というのは素人の人には分からないと思います。

そして、たぶん、キチンと作ったパンフレットなら、出来上がりで「おお!」と声が出るような仕上がりにあなるはずです。

だって、それを目指して作ってるわけですから。
とにかく、その「おおー!」というのがなければ、まぁ、あまり効果はないですからねぇ、パンフレットは。

そう思います。


そのために、刀鍛冶のように刃をひたすら研ぎあげていくわけです。


[了]

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by kids1226 | 2015-06-09 12:00 | マーケティング | Comments(0)
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